経済産業省の『中小企業の雇用状況に関する調査』によると、平成26年度に正社員の賃金を引き上げた(引き上げる)中小企業は64.5%に上ります。(調査対象は3万社、うち回答は10,380社)
昨年度の数字は56.8%ですので、今年度は7.7ポイント増加しています。
興味深いのは引き上げの理由です。75.7%の企業が『従業員の定着・確保』を挙げており、2位の『業績回復の還元』の28.9%を引き離してダントツの1位となっています。
また、人材採用に関する問題点・課題という質問(複数回答可能)では、『募集をかけても採用したい人材がいない』が48.0%で1位となり、『募集をかけても人が集まらない』が36.9%で2位となっています。
このことから、多くの中小企業は人材の獲得に苦労していることが見て取れます。中小企業は賃金面以外でも、知名度や福利厚生などの面で大企業よりも不利なことが、人材獲得を一層難しくしていると考えられます。更に、最近のアベノミクスによる景気回復や少子高齢化などの外部要因も少なからず関係していると考えられます。
優秀な人材を1人でも多く獲得するため、そして苦労して獲得した人材を定着させるため、多くの中小企業は賃金引上げに動いている、と想定できます。
ただ、賃金(の引き上げ)のような『衛生要因』はもちろん大事ですが、中長期的な視点からは働き甲斐や自己実現などの『動機づけ要因』も忘れてはいけない重要なファクターではないでしょうか。そして、それらは大きなコストをかけずに制度の工夫や意識の改革で実現・導入できるものだと考えます。