運送業の会社を定年退職になったトラックドライバーの従業員が、嘱託再雇用時に賃金が現役時よりも大幅に低下したのは労働契約法違反だとして、東京地方裁判所に提訴していました。

会社側は「定年後も同じ賃金で雇用する義務はない」として争っていましたが、つい先日、東京地裁は「仕事の内容が正社員と同一と認められるので、賃金に格差が生じるのは違法だ」という判決を出しました。安倍政権の方針を意識したのかどうかは分かりませんが、同一労働・同一賃金という考え方に合う判決だと思います。

しかし、定年後の嘱託採用者にも一律にこの考え方が当てはまるでしょうか?通常人は年を取れば、体力や集中力が低下します。現役でバリバリ働いていた時と同じアウトプットは出せなくなります。仕事の内容が契約上は現役時と同一であったとしても、現役時と同じ能率で仕事ができるとは限りません。むしろ、加齢によって能率が低下すると考えるほうが一般的でしょう。

もちろん、定年退職した瞬間からスイッチが切り替わって能率がガクンと落ちるわけではありません。しかし、定年退職により雇用形態が変わるタイミングで、加齢による労働能率の低下を考慮して、それに見合った賃金の引き下げをしたい、と考えるのは経営者なら当然のことでしょう。

上記のことが判決でどのように考慮されたのか(又はされなかったのか)、個人的にとても興味があります。今後、判決内容の詳細な情報や各方面の専門家による分析が出てくるのを待ちたいと思います。